「週刊テツタビ百科」第27号
2009年10月25日
スナフキン藤田です。
いつも「すまいるトレイン777」に、ご乗車ありがとうございます。
今回は、初めて外国の鉄道の特集です。
世界の屋根を走る「青海チベット鉄道」をご紹介します。
第27号 (2009.10.24 ON AIR)
~海抜5千メートルを駆ける天空列車~
中国・青海チベット鉄道 PART1
●概略
・路線:中国青海省「西寧」~チベット自治区「ラサ」
・総延長:1,956km
第1期工事 西寧~ゴルムド 814km (1984年開通)
第2期工事 ゴルムド~ラサ 1,142km (2005年開通)
・総工費:4500億円
・全線非電化
●特徴
・世界一高所を走る鉄道
最高地点が海抜5,072mのタングラ峠。近くのタングラ駅は5,068mで、
「世界一高い場所にある駅」です。平均高度約4,500m、
4,000mを超える部分がナンと960km!
●環境への配慮
・沿線となる「ココシリ自然保護区」は、その場所にしか生息していないチベット
カモシカや希少動物、多くの高山植物が生息しているため経路を通ります。
・線路で動物の行き来を遮断しないように、計33ヶ所の通路を設置。
・高山植物が植生する地域の石材を採掘せず、50kmほど離れた植生のない土地に
採石場を設けました。
・止む無く植生地帯を通過する際は、予め植物を別の地域へ移動したり種子を採取し、
専門家がその土地の環境に即した再生作業を施し、一部は工事終了後に元に
戻しました。
・土をなるべく掘らず、残土を積み上げたまま放置しないようにします。
・工事で生じた泥水を河川へ流す場合は、徹底的な沈殿処理を行いました。
・工事従事者全員に環境保護に関する座学を設け、工事期間中規則に違反した者に
ついては厳しい処分を科しました。
●困難な工事
・工事従事者→低い気圧と酸欠による高山病、昼夜の気温差 冬季の強風 厳寒
(最低気温-45℃ 酸素は平地の50%)作業中は5kgの酸素ボンベを
背負いました。
・ツンドラ(永久凍土)地帯との闘い
凍土地帯を含む永久凍土地帯は550kmにも及びます。「世界で最も高所で、
最も不安定な凍土地帯」と呼ばれ、地球温暖化の影響を最も受けやすいために、
年々凍土が不安定になってきているそうです。
凍土地帯の対策:地中深くまで基礎杭を打ち込み、高架橋として地表から浮かせる
工法を採用。
永久凍土地帯の対策:線路が直接地表に敷設される区間では、地中温度の上昇を
防ぐため、アンモニアを封入した金属性の杭を軌道に沿って多数埋め込み、
放熱効果により確実な凍結を維持出来る様にしました。
*永久凍土とは夏になっても融けることのない凍った大地で、深さは何百メートルにも
達するとか。それでも夏場には表面の0.6~4メートルが融けて体積が収縮し、
冬場になるとまた凍結して膨張します。その様子は霜柱の立つ地面と同じ。
朝のうちは霜柱をザクザクと気持ちよく踏んで歩けますが、日が差してくると
一面ぬかるんで足元は悪くなります。深さ60センチもぬかるんだら足をとられて
とても歩けません。そんな地面に線路を敷いて列車を走らせることを想像して下さい。
シベリアなど高緯度地域には永久凍土上の鉄道もありますが、日射が強い低緯度帯に
こんなに長い距離を走る鉄道は他に存在しません。シベリアでは今、永久凍土が
急速に融解し、牧草地が水没したり道路が崩壊していると報じられています。
●青海チベット鉄道保有の世界一
①世界最高所を走る鉄道:5,072m
②世界最高所の高原凍土トンネル:風火山トンネル 全長1,386m 海抜4,905m
③世界最長の高原凍土トンネル:崑崙山トンネル 全長1,686m 海抜4,600m
④世界最高所の駅:タングラ駅5,068m
⑤最長の高架橋:清水河特大橋 全長11.7km 海抜4,600m
⑥世界最高所の鉄橋:三岔河大橋 全長690.19m 海抜3,800m

青海チベット鉄道路線図 ~china railway club HP より引用~

三岔河大橋を渡る列車 ~china railway club HP より引用~

ココシリ自然保護区を行く列車 ~china railway club HP より引用~
*写真は何れも拡大出来ます。
次回は、機関車・客車、設備についてお届けする予定です。お楽しみに!!
いつも「すまいるトレイン777」に、ご乗車ありがとうございます。
今回は、初めて外国の鉄道の特集です。
世界の屋根を走る「青海チベット鉄道」をご紹介します。
第27号 (2009.10.24 ON AIR)
~海抜5千メートルを駆ける天空列車~
中国・青海チベット鉄道 PART1
●概略
・路線:中国青海省「西寧」~チベット自治区「ラサ」
・総延長:1,956km
第1期工事 西寧~ゴルムド 814km (1984年開通)
第2期工事 ゴルムド~ラサ 1,142km (2005年開通)
・総工費:4500億円
・全線非電化
●特徴
・世界一高所を走る鉄道
最高地点が海抜5,072mのタングラ峠。近くのタングラ駅は5,068mで、
「世界一高い場所にある駅」です。平均高度約4,500m、
4,000mを超える部分がナンと960km!
●環境への配慮
・沿線となる「ココシリ自然保護区」は、その場所にしか生息していないチベット
カモシカや希少動物、多くの高山植物が生息しているため経路を通ります。
・線路で動物の行き来を遮断しないように、計33ヶ所の通路を設置。
・高山植物が植生する地域の石材を採掘せず、50kmほど離れた植生のない土地に
採石場を設けました。
・止む無く植生地帯を通過する際は、予め植物を別の地域へ移動したり種子を採取し、
専門家がその土地の環境に即した再生作業を施し、一部は工事終了後に元に
戻しました。
・土をなるべく掘らず、残土を積み上げたまま放置しないようにします。
・工事で生じた泥水を河川へ流す場合は、徹底的な沈殿処理を行いました。
・工事従事者全員に環境保護に関する座学を設け、工事期間中規則に違反した者に
ついては厳しい処分を科しました。
●困難な工事
・工事従事者→低い気圧と酸欠による高山病、昼夜の気温差 冬季の強風 厳寒
(最低気温-45℃ 酸素は平地の50%)作業中は5kgの酸素ボンベを
背負いました。
・ツンドラ(永久凍土)地帯との闘い
凍土地帯を含む永久凍土地帯は550kmにも及びます。「世界で最も高所で、
最も不安定な凍土地帯」と呼ばれ、地球温暖化の影響を最も受けやすいために、
年々凍土が不安定になってきているそうです。
凍土地帯の対策:地中深くまで基礎杭を打ち込み、高架橋として地表から浮かせる
工法を採用。
永久凍土地帯の対策:線路が直接地表に敷設される区間では、地中温度の上昇を
防ぐため、アンモニアを封入した金属性の杭を軌道に沿って多数埋め込み、
放熱効果により確実な凍結を維持出来る様にしました。
*永久凍土とは夏になっても融けることのない凍った大地で、深さは何百メートルにも
達するとか。それでも夏場には表面の0.6~4メートルが融けて体積が収縮し、
冬場になるとまた凍結して膨張します。その様子は霜柱の立つ地面と同じ。
朝のうちは霜柱をザクザクと気持ちよく踏んで歩けますが、日が差してくると
一面ぬかるんで足元は悪くなります。深さ60センチもぬかるんだら足をとられて
とても歩けません。そんな地面に線路を敷いて列車を走らせることを想像して下さい。
シベリアなど高緯度地域には永久凍土上の鉄道もありますが、日射が強い低緯度帯に
こんなに長い距離を走る鉄道は他に存在しません。シベリアでは今、永久凍土が
急速に融解し、牧草地が水没したり道路が崩壊していると報じられています。
●青海チベット鉄道保有の世界一
①世界最高所を走る鉄道:5,072m
②世界最高所の高原凍土トンネル:風火山トンネル 全長1,386m 海抜4,905m
③世界最長の高原凍土トンネル:崑崙山トンネル 全長1,686m 海抜4,600m
④世界最高所の駅:タングラ駅5,068m
⑤最長の高架橋:清水河特大橋 全長11.7km 海抜4,600m
⑥世界最高所の鉄橋:三岔河大橋 全長690.19m 海抜3,800m

青海チベット鉄道路線図 ~china railway club HP より引用~

三岔河大橋を渡る列車 ~china railway club HP より引用~

ココシリ自然保護区を行く列車 ~china railway club HP より引用~
*写真は何れも拡大出来ます。
次回は、機関車・客車、設備についてお届けする予定です。お楽しみに!!
Posted by 小坂真智子 at 11:01│Comments(0)
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